『稲とアガベ』 今大注目!秋田にできた新しい酒蔵に迫る!

『稲とアガベ』 今大注目!秋田にできた新しい酒蔵に迫る!

全国有数の米どころ・豊かな自然に囲まれた秋田県では、古くから酒造りが盛んに行われ、その多くは創業100年を超えています。そんな秋田県になんと、新しい酒蔵ができたらしい・・・。お酒が好きな筆者はとても気になり、早速行ってみることに。今回は、男鹿市にできたばかりの酒蔵と創業者の想いに迫ります!日本酒好きの方は特に必見です♪

【旧男鹿駅に日本酒醸造所がオープン!】

醸造所がオープンするのは秋田県の西部、日本海に面した男鹿市。山と海が織り成す美しい自然景観やユネスコ無形文化遺産に登録された“男鹿のナマハゲ”で有名な土地です。JR秋田駅から男鹿線に乗り約1時間。男鹿駅に着いてすぐのところに、ひと際目立つ「稲とアガベ」と書かれた建物を発見!古くから残る駅舎の雰囲気を残しつつも、ここが日本酒の醸造所!?と疑いたくなるくらいオシャレな佇まいです。早速、中にお邪魔してみます。
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旧JR男鹿駅舎をリノベーションした醸造所。駅舎の面影が随所に残る素敵な建物です。

醸造所内は、もろみタンク・麹室や搾り機などが整備されています。他の酒蔵と比べるとコンパクトなつくりですが、造ったお酒をすぐに売るため、この広さで充分だそう。なお、ここで取り扱っているのは、輸出用の日本酒やどぶろくなど、ちょっと変わったお酒のみ。何で輸出用?と思いますよね。この後、その理由を聞いていきます!
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5つのタンクの後ろには、きっぷ売り場のマーク。醸造所内のあちこちに駅の名残が。

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受け入れ体制が整ったら酒蔵見学や醸造体験も考えているそうです♪

素敵な笑顔で出迎えてくれた創業者の岡住修兵(おかずみ しゅうへい)さん。醸造所やご自身について沢山お話を聞きました!筆者は岡住さんのお話にワクワクが止まりませんでした...!!
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出身は福岡県という岡住さん。少しお話を聞くだけで不思議と惹きつけれられる、そんな方でした。

早速お話を聞いていきます!
日本酒が好きで、酒造りを学びたいと思ったことが業界に入ったきっかけという岡住さん。縁あって、秋田市の「新政酒造」で働くことに。

-本当に日本酒がお好きだったんですね。起業しようと考えたのは、いつ頃なんですか?

「もともと新政に入る時、3年で辞めて起業するつもりでいましたが、そこで酒造りの面白さにハマったんです。職場環境も良く、結局4年半新政に勤めました。」

-なぜ新しい酒蔵をつくろうと思ったんですか?

「日本酒の未来に貢献したいという強い思いがありました。働いているうちに業界の問題点が見えてきて、自分の酒蔵を造る為に独立したくても、新規参入できない現在の日本酒業界の状況や蔵人の労働環境を変えたいと思い立ちました。」

-現場で働くからこそ、見えてくるものがあったんですね。

「蔵人の賃金は低く、仕事が好きでも辞めていく人が多いのが現状なんです。人が辞めていき、若い人達が活躍しにくいという業界の問題点が見えてきました。自分が新規参入を実現することで、若い人達が独立して新しい酒蔵をつくることができるようになれば日本酒業界の未来も明るいものになると考えています。稲とアガベが影響力を高めて、現在の法律を変えることが僕の造り手としての最大の目標です。」

現在の法制度では、新規の清酒(日本酒)製造免許が認められていません。酒蔵をはじめるには免許をもつ企業を移転・買収するのが一般的。そのため、稲とアガベ醸造所では輸出用の日本酒とどぶろくなどのその他の醸造酒を造っています。
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稲とアガベのロゴ。真ん中のパイナップルのようなものは、アガベというテキーラの原料。テキーラ好きの奥様と結婚する際につくったこの家紋につけた名前を、せっかくだから会社名やロゴとしても使うことに!

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全量米麹で造られたお酒、稲とコウジ。新しいお酒との出会いに終始心が躍りました。

【酒造りを通じて秋田へ恩返しを!】

-ご出身が福岡とお聞きしましたが、なぜ秋田で起業することを選んだのですか?

「新政で働き秋田に住んだことで多くの友人ができたんですが、その友人たちはもちろん、秋田の人達が温かく僕に接してくれたことが何よりも嬉しかった。僕の人生が拓けたのが秋田でした。秋田での酒造りを通じて、秋田へ恩返しをしたいという想いが強くありました。」

-それでは、その中でも男鹿を選んだのは?

「男鹿は海や山の恵みが豊富で景観も良い。そして酒蔵が一軒もない。また、相談した男鹿の友人や市職員が熱心に協力してくれて、男鹿の方々の人の良さに触れたことでますますここで醸造所を立ち上げたいという気持ちが高まりました。様々な人との出会いと協力があって、醸造所をオープンすることができました。」

【自然栽培の米を余すことなく使い、磨かなくても美味しい酒を造る】

-そんな男鹿で造るお酒のこだわりを教えてください。

「僕の酒造りのポリシーは、磨かない酒造り。今は大吟醸のニーズが高く、“酒米を削って磨き上げること”に価値が置かれる傾向があります。その一方で、取り除かれた米ぬかや、醸造工程で発生する酒粕は、供給過多が続けば捨てることになります。農家さんが大切に育てた米を捨てて酒を造っているように思え、今の時代に合わないのではと考えるようになりました。

-生産者さんへの敬意とお米を大切にするいう思いが、磨かない酒造りに繋がっているんですね。

「米に含まれるタンパク質が雑味に繋がるのですが、タンパク質は肥料からくるものだから、肥料を使わない、つまり自然栽培した米を使えば磨かなくても美味しい酒になると考えました。また、そうすることでその土地の味が酒に現れるはず。」
現在は、大潟村の自然栽培農家「石山農産」の米と能代市にある自社田の米を使って酒造りをされている岡住さん。今後は男鹿の「里山デザイン」という若い人達が栽培した米も使うつもりだそう。
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稲とアガベPrototype03(左)・04(右)。醸造は群馬県の土田酒蔵に委託しており、販売初日に在庫切れになるほど人気だそう・・・!

【雇う人の未来を見据えて雇用する】

-一緒に働く人をTwitterで募集したというのを耳にしたのですが、本当ですか?(笑)

「本当です(笑)Twitterで従業員を募集したところ20人もの人がここで働きたいと面接に来てくれたんです。その内3人をレストランのシェフや店舗マネージャーとして採用しました。ここで働くことがそれぞれの未来に繋がるきっかけやチャレンジの場になってほしいですし、今後は事業を拡大して、男鹿に来て一緒に働きたいと言ってくれている人を皆採用できるように頑張りたいと思っています。」

【岡住さんの2つの目標】

「僕の最大の目標は2つ。1つは、新規参入を実現させること。もう1つは、秋田でやりがいがあり、賃金も高い、より良い雇用を生んでいきたい。それが僕が秋田にできる恩返しだと思っています。そのために、これから男鹿で様々な事業を立ち上げていきます。その1つが、併設しているレストランです。」

稲とアガベ醸造所では、従業員の給料をできるだけ多く支払い、米は農家の提示価格の2倍で買い取る。また、酒販店の手数料も業界の平均値以上に設定しているそう。岡住さんの考えの根底に「自分と関わる全ての人を幸せにしたい」という強い思いを感じ、筆者は感銘を受けました。

【お酒と料理のペアリングが楽しめるレストラン「土と風」】

醸造所の隣には、「土と風」というお酒と秋田の食材を使ったお食事を楽しめるレストランが併設されています。
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コンセプトは“男鹿を中心に秋田の食材をPRする拠点”。地元の食材を使うことで生産者との繋がりを大切にしながら、一皿一皿にストーリーを落とし込んだ“秋田を表現する料理”を、岡住さんが選んだお酒と一緒に楽しめます。アルコールが飲めない方のために、単品にてノンアルコールドリンクも準備しているそう。
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カウンター6席、メニューは8品のディナーコースのみ。お酒のペアリングセットも用意されており、岡住さんがお話をしながら一杯ずつお酒を提供してくれます。

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乾杯酒の稲とアガベトロピカルサワー。稲とアガベのどぶろくとパイナップルジュース、トニックウォーターでつくったサワー。とっても美味しくて忘れられません...!

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料理を担当するのは、イタリアンとフレンチのシェフ2人。月替わりで交代しながら料理を振る舞ってくれます。毎月異なる料理を楽しめるので何度でも通いたくなってしまいますね♪
ランチタイムはテイクアウト専門店として、地元食材を使ったホットドッグ、稲とアガベの酒粕を使ったソフトクリームやお酒の物販などを行っています。
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今回はイタリアンのシェフ。シェフが一皿一皿説明してくれるのでより料理を美味しく楽しめます♪

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今回のメインディッシュ“男鹿和牛ナマハゲのロースト”。男鹿産の柔らかいお肉と赤ワインとアガベシロップのソースが相性抜群でした♪

【男鹿をブルゴーニュの様な世界中から人が集まる土地に!!】

-今後の展望を教えてください。

「男鹿を巻き込みながら様々な事業をこれから行うつもりです。2022年春頃には空き家を活用して、酒粕でつくるマヨネーズなどの食品加工場を建てます。また、秋田のシンボルとなるような男鹿の食材を使った料理を楽しめるオーベルジュを、3年以内につくりたいと考えています。フランスのブルゴーニュのような、誰もが一生に一度は行きたい!と思える様な場所にし、男鹿を世界中から人が集まる様な土地にしたいです。」

岡住さんのお話を聞くと、不思議とこの人ならやってくれそうという期待感が高まります。男鹿に来る度に何か新しいことが始まっていそうで、何度来ても楽しめそうですね。オーベルジュが完成したら必ず行きたい...!

また、岡住さんは男鹿を日本酒特区の第一号にするべく動いているそうです。男鹿を日本酒特区にすることで沢山の醸造家が集まり、空き家を使った小さな醸造所を増やし、男鹿を酒どころにしたいとのこと。酒蔵が一軒もなかった男鹿が、稲とアガベができたことによって醸造家が集まる場所になったら、今よりもっと活気が生まれて面白くなるはず。岡住さんや稲とアガベから目が離せません!!!
ぜひ今大注目の酒蔵、稲とアガベのお酒を楽しみに男鹿へ訪れてみてくださいね♪

〈稲とアガベ醸造所〉
◆住所:秋田県男鹿市船川港船川新浜町1-21
◆アクセス:JR男鹿線男鹿駅から徒歩約5分
◆HP:https://www.inetoagave.com/
◆レストラン「土と風」予約ページ:https://coubic.com/inetoagave#pageContent
・営業日・時間
火~土曜日/19:00~22:00(19:00一斉スタート)
◆テイクアウト
・営業日・時間
水~日曜日/11:00~16:00
・メニュー
男鹿プルドッグ・酒粕ソフトクリーム・さとやまコーヒー・稲と甘酒など
どぶろくなどの有料試飲も行っています。
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(取材:2021年10月)