餅巾着の中にきりたんぽ!?しょっつるを隠し味に使ったおでんが絶品「さけ富」
入口は大人がしゃがんでやっと通れるほどの大きさ。隠れ家のような趣があります。
秋田市の繁華街「川反通り」に店を構える「さけ富」は、白神山水、男鹿半島の塩、しょっつるなど、秋田県産の素材を活かした出汁で煮込んだ「秋田おでん」が有名です。約30種類の具材があり、「比内地鶏のたまご」や「秋田産枝豆さつま揚げ」など、地産地消のオリジナルメニューも豊富。店名のとおり、秋田の地酒を数多く取り揃えているので、少人数またはふらっと1人で飲みたい秋田の夜におすすめのお店です。
カウンター15席、テーブル8席。落ち着きのある空間です。
中でも郷土料理を感じられる人気メニューが、「さけ富名物 キリタンポ袋」。おでんの定番具材である餅巾着の中に、きりたんぽ鍋の具材をたっぷりつめこんだ一品です。きりたんぽのもっちりした食感とお米の粒感に、巾着に染み込んだ特製出汁の旨みがジュワッと絡みます。店員さん曰く、「お鍋1つ食べるより、ぺろっと食べられるところがポイント」とのこと。全て手作りで、数量限定のため、売り切れてしまうこともあるそうです。
「キリタンポ袋」(左上)は、1つ390円(税込429円)。巾着の中にはきりたんぽ、せり、ごぼう、長ネギ等が入っています。
もう1つのさけ富名物は「秋田かに面」。秋田県産の紅ずわいを使用しています。
おでん以外にも美味しい小料理が多数。「いぶりガッコクリームチーズ最中」は写真映え間違いなし!
「おでん茶漬け」は〆に是非食べてほしい一品。出汁の旨みを余すところなく堪能します。
おでんの美味しさをより一層引き立ててくれるのは、店員さんのトーク。
店員さんそれぞれには、なんとおでんの具材の名前がついています。「おだしさん」「ロールキャベツさん」と気軽に呼んでくださいね、とのことでした。愛嬌とおもてなしの心がたっぷりの店員さんとお話しできるのも、ディープなお店の醍醐味ですよね。
思わず声に出したくなってしまうチャーミングな名前。
秋田美人のにっこり笑顔と絶品おでん、心も体も温まります。
ライブ感満載の稲庭うどんを召し上がれ!「天ぷら正心庵」
稲庭うどんの名店「佐藤養助総本店」の目の前にお店を構えます。
日本三大うどんの1つとして知られる「稲庭うどん」は、ツルッとした喉越しとコシの強さが特徴。今では秋田県内各地で食べることができますが、約350年の歴史を誇る“稲庭うどんの里”、ここ湯沢市稲庭町では本場の茹でたてのうどんと揚げたての天ぷらのコース料理を味わえるお店があるんです。のれんをくぐると日本庭園が広がります。秋田の自然に包まれながらゆったりランチを楽しみたい、そんなアナタにぴったり!さあ、潜入してみましょう。
稲庭うどんをカウンター8席で味わう特別感。襖や置物もセンスがキラリと光ります。
今回ご紹介するのは、季節のおまかせ天ぷらコース。秋田で水揚げされた旬の魚介や、地元の朝採れ山菜がズラリ。食材に合わせて揚げ具合や衣の厚さを調節しています。例えば、ヒラメは2日間寝かせて水分を飛ばし、旨味を凝縮させて軽く揚げる。逆に強めに揚げたクロソイは天つゆと合わせて。このように料理長がこだわりや食べ方を説明してくださるのも嬉しいですよね。
自然からの贈り物を、衣にそっと包んでいただきます。
蓮根は、揚げることで香ばしく、程良い歯ごたえに。
地元朝採れの山うど。塩、天つゆはお好みで。
コースの終盤には、お待ちかねの稲庭うどん。温麺、冷かけ、つけ麺から選択可能ですが…。お客さまをもてなすときはつけ麺、自宅で食べるときは冷かけというように、地元の人はシーンによって食べ方を変えるんだとか。冷かけのトッピングは幅広く、秋田の名産であるギバサやとんぶりとも相性が良いそうですよ。
絹のようなうどんが光り輝きます。醤油つゆとごまだれでさっぱりと。
秋田の伝統工芸、川連漆器で提供される冷かけは絶品。
正心庵の向かいにある「佐藤養助総本店」では、『工場見学コース』や『製造・調理体験コース』、直営店限定商品の販売など、総本店ならではの体験が可能です。食事の前後に足を運んでみてはいかがでしょうか。
稲庭うどんの製造工程を見ることができます。体験コーナーもありますよ。
佐藤養助総本店は入場無料。
まさに芸術!1/2サイズの高級ババヘラアイスがかわいい「kimura」
ビルの一角に身を潜める「kimura」。オープンキッチンを囲むカウンターは8席。
肥沃な地で育った野菜や穀物、日本海で獲れた鮮魚、澄んだ空気と綺麗な水という環境の下で飼育された家畜、古くから受け継がれてきた発酵文化など…秋田は言わずと知れた食の宝庫。今、県外で長年活躍した多くのシェフたちが、出身地である秋田に戻り、地の食材を使用した料理を振る舞っています。今回は、中でも地産地消へのこだわりが強い、とあるお店をご紹介します。
メニューは月替わりのコース1つのみ。フレンチやイタリアンの枠を超えた独創的で美しい皿を、ワンオペで完成させていく様子をカウンター越しに愉しむことができます。秋田の食材を最高の状態で味わってみたい、忘れられない旅の思い出を作りたい、そんなアナタにおすすめしたいのが、JR秋田駅から徒歩圏内、秋田市大町にある「kimura」です。
本日のメニューとカトラリーは引き出しの中に。お道具箱のようでワクワクします。
取材時の「5味をテーマにしたアミューズ」。甘味には西明寺のさつまいも、苦味には山うどのソテーと羽後町のカマンベールチーズなど。
コースの最初は、「酸味・苦味・甘味・塩味・旨味」の5味を堪能できるアミューズ(前菜より先に提供される一口サイズのおつまみ)。毎月変わる宝箱のようなアミューズは「kimura」の名物です。全12品と満足感たっぷりなコースですが、「あえてフォアグラやキャビアは使わず、徹底的に県産食材にこだわっている」と木村シェフ。日々、秋田の市場で食材を開拓しているため、秋田県民にも知られていない驚きのグルメに出会うことができます。
秋田のアスパラ、真ダコと土田牧場のヨーグルトソース。オイスター風味の花と、比内地鶏の卵で彩りも豊かに。
男鹿産のメバルに羽後町のエゴマの実をつけて揚げた魚料理。スープにはメバルの出汁と藤里町のアニスを使用しています。
大自然を感じさせる芸術的な肉料理。比内地鶏のもも肉のローストに、レバーやきんかん等のモツ類を使用したソース。新鮮な三関のセリも秋田ならでは。
コース最後のデザートは「ババヘラアイス」。カラフルなパラソルの下、売り子さんがヘラを使って盛り付ける、秋田県でしか食べられないご当地アイスです。お祭り、イベント、そして道端でも売っていて、シャーベット状の優しい味が親しまれています。
ここ「kimura」で提供されるのは、これまでの常識を覆すような高級アイス。貝殻が重なり合うように凜と佇む姿は美しく、羽後町産の「あきひめ」を使用した甘酸っぱいイチゴとクリーミーで濃厚なバナナの味がひんやりと染み渡ります。「秋田だからこそ作れる料理を提供したい」という想いで帰郷したシェフが追求する“秋田の味”をご堪能ください。
開店当初から提供し続けている感動の一作。この衝撃を体感あれ。
曲げわっぱの中には小菓子が。秋田フキのお茶と一緒にどうぞ。
kimura
【住所】秋田県秋田市大町2-1-4 竹谷ビル2F
【交通アクセス】JR「秋田駅」西口から徒歩13分
【旅館編】シェフのアイデアが光る!秋田県産食材を使った創作料理が話題の旅館「お宿 山の抄」
小安峡の入口で佇む、シックな外観のお宿。
こだわりの料理を味わえるのは、飲食店だけではないんです。最後にご紹介するのは、秋田県の南端に位置する小安峡温泉のお宿。ここは昔ながらの情緒とあたたかいおもてなしが共存する旅館が粒ぞろいな温泉郷で、四季毎に姿を変える渓谷や、大地の息吹を感じさせる大噴湯は、都会の喧噪を忘れさせ“非日常”を演出してくれます。
そんな小安峡で今、郷土料理を始めとした県産食材のアレンジに力を入れているのが「お宿 山の抄」。旬の素材を使い、季節ごとに創り上げる料理が自慢の温泉旅館です。
総部屋数は6室。自然を感じながらゆったりと流れる時間を過ごせます。
「山菜のアヒージョ」は山の抄の名物。
バケットにどっさりと山菜を乗せて。食べ終えるのがもったいない!
身近な食材を、意外な食べ方で提供したいという想いから考案したのが「山菜のアヒージョ」。熱々のオイルと絶妙な塩気で食べる山菜は、お酒との相性も抜群で、山菜を食べ慣れていない方はもちろん、ご高齢の方にも大好評だそうです。
濃厚なのにチュルンと食べやすい「ジュンサイのビシソワーズ」
また、「ジュンサイのビシソワーズ」もアイデアが光るメニュー。ゼリー状のぬめりを纏う秋田の特産「ジュンサイ」は、その輝きから食べるエメラルドとも言われています。醤油や酢をかけてシンプルに食べるか鍋にするのが主流ですが、あえてジャガイモの冷製ポタージュと組み合わせることで、濃厚かつ食べやすい仕上がりになっています。
他にも「鮎のフリット」「稲庭うどんの冷製トマトスープ」など、秋田で馴染み深い食材を、普段とは違う調理方法で、見た目も楽しめることをコンセプトに開発した料理が揃っています。
身は丸めてほっくりと、頭から尾にかけてはカラッと揚げた「鮎のフリット」
温泉の地熱を利用した地元「栗駒フーズ」の乳製品ドリンク。秋田県横手の「日の丸醸造」が開発した、とろ~り甘いヨーグルト味のお酒は女性に人気!
“抄”には「一部をすくい取る」という意味があり、この地の選りすぐりをすくい取って提供したいという想いが込められています。その名のとおり、地元の野菜や山菜を、今までにない価値や感動と一緒に届けてくれる料理の数々をぜひ一度味わってみてはいかがでしょうか。
お宿 山の抄
【住所】秋田県湯沢市皆瀬湯元185-1
【交通アクセス】
湯沢IC(湯沢横手道路)から車で約30分
JR「湯沢駅」から車で30分
今回は、秋田の郷土料理にトキメキを与えてくれる名店をご紹介しました。価格帯も場所も様々なので、ご旅行のシーンに合わせて訪れてみてください。そして、美食が揃うお店やお宿が秋田にはまだまだあります!ぜひ色んなお店を訪れて、秋田の豊かな食を堪能してみてくださいね。
(公開:2022年6月)