秋田で出会う、世界遺産。Primitive Japan

秋田で出会う、世界遺産。Primitive Japan

秋田県と青森県の境にまたがり、世界最大級のブナの原生林が広がる「白神山地」は、1993年に世界自然遺産に登録されました。そして2021年には鹿角市の「大湯環状列石」と北秋田市の「伊勢堂岱遺跡」が北海道・北東北の縄文遺跡群を構成する遺跡として世界文化遺産に登録されています。秋田県では県内の3つの世界遺産と出会った3人の主人公が織りなすロードムービー「Primitive Japan」を製作。ここでは、映像の見どころとともに、秋田の世界遺産や観光スポットの魅力をご紹介します。

ブナの森が教えてくれた、大切なこととは。「白神山地編」

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世界遺産・白神山地に抱かれた藤里町、そして白神山地から恵みの水が流れ込む米代川を有する能代市。2つの町を舞台に、都会から秋田を訪れた主人公が、美しくたくましい大自然と、人の出会いの温かさに触れる旅を描いた物語。
最初にやってきたのは藤里町の岳岱自然観察教育林。白神山地の散策コース に車でアクセスできることから、トレッキングスポットとしても人気です。現代では姿を消しつつある、ブナの原生林が広がる森は、木々やそこに暮らす生き物が互いに助け合い、支え合って次の世代へと命を繋いでいるのだと、地元ガイドは語ります。

[岳岱自然観察教育林]
藤里町藤琴沢国有林
秋田自動車道二ツ井白神ICより車で約1時間
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車窓からふと見上げた森の木々の色も、より鮮やかに感じられます。

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トレッキングコースが整備されており、安全に散策を楽しむことができます。

トレッキングを終えて藤里町を離れると、山間を緩やかに流れる大きな川に出会います。白神山地を流れる藤琴川を含めたいくつかの支流が流れ込む米代川。秋には鮭が遡上し、産卵の様子も見られるという豊かな川です。ここでは川の流れの緩やかさを活かした、カヌーツーリングを楽しむことができます。
 
[二ツ井カヌーツーリング]
能代市二ツ井町小繋字泉98番地1
秋田自動車道二ツ井白神ICより約5分
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能代市内にある「道の駅ふたつい」に隣接した施設でカヌー体験を受け付けています。

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穏やかな川の流れと一体になり、ゆったりとした時間が流れます。

トレッキングにカヌーと秋田の自然を満喫したあとは、能代市で長年地元の人々に愛される居酒屋、「酒どこ べらぼう」へ。ここでは居酒屋と共に、アットホームさが魅力の民宿「川どこ べらぼう」も営んでおり、今夜はこちらに泊まることに。初めて食べるのにどこか懐かしい秋田の郷土料理や、オーナー夫妻の温かさに触れ、知らず知らずのうちに緊張してしまっていた心がほぐれるのを感じます。
 
[酒どこ べらぼう]
秋田県能代市柳町2-39
TEL/FAX:0185-54-4066
 
[川どこ べらぼう]
秋田県能代市能代町字赤沼48-21 
TEL:0185-53-3040 
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「どこから来たの?」と気さくに話しかけてくれる「べらぼう」のオーナー夫妻。

互いに支え合って生きる豊かなブナの原生林や、温かい地元の人々との出会いを通して、主人公は「私も森の木々と同じように、色々な人や出会いに支えられて生きているのだ」と気がつきます。少し立ち止まって考える。忙しい日常に追われ忘れてしまいがちなほんのささいな、でも大切な「気づき」が、秋田にはありました。

縄文の先人を訪ねて。「伊勢堂岱遺跡編」

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「何かに行き詰まったのなら、彼らに聞けばいい」そんなナレーションとともに始まるこの物語は、なんだかツイていない主人公が、秋田に息づく縄文文化を訪ねて、仙北市から北秋田市の深い山間を旅するお話です。
秋田のローカル線、秋田内陸縦貫鉄道の通る、桧木内(ひのきない)地区・松葉駅。旅が始まったばかりの主人公は、乗るはずだった電車をうっかり乗り過ごしてしまいます。幸先の悪いスタートながら、なんとか電車に乗ってやってきたのは北秋田市の伊勢堂岱遺跡。この遺跡は、2021年に北海道・北東北の縄文遺跡群のひとつとして世界文化遺産に登録されました。遺跡の側には、資料館があり、この遺跡で出土した土器や土偶などの出土品と、遺跡発掘にまつわる資料を見ることが出来ます。
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旅が始まって早々、乗るはずだった電車に置いてきぼりに。

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資料室の入り口で来場者を迎える不思議な形の「いせどうくん」こと板状土偶のレプリカ。

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ケースに展示されている実際の板状土偶。実物のいせどうくんは意外に小さい。

資料館の外に続く遺跡エリアでは、発掘された実際の遺跡を間近で見ることができます。穏やかな夕日に照らし出されるかつて縄文人が暮らした高台の遺跡では、現在までに配石遺構や建物の柱の跡、お墓とみられる跡などが見つかっています。およそ1万年続いたと言われる縄文時代。先人の生きた地球は数々の気候変動や災害に見舞われていたとされています。困難な環境のなか、縄文人たちは自然と共生し、互いに助け合い、知恵を出し合うことでこの日本に豊かな文化を築き上げました。
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実際の遺跡を前で、太古の昔にこの地に暮らした先人たちに思いを馳せます。

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上空から見た伊勢堂岱遺跡。村の遺構や環状列石が見えます。

「何かに行き詰まったのなら、彼らに聞けばいい」。これはうまくいかない旅の終わりに、主人公がたどり着いた答えでした。今よりもずっと、生きることそのものが困難だった時代。共に助け合い、苦難を乗り越えて文化を作り上げた縄文人が、今の自分を見たらきっと笑うだろう。「そんなちっぽけなことで行き詰まってどうする」と。そんな風に思わせてくれる、先人の偉大な痕跡を辿る旅となったのでした。

[伊勢堂岱遺跡]
北秋田市脇神字伊勢堂岱
JR鷹ノ巣駅より車で15分

縄文の暮らしは、私たちに何を教えてくれるのか。「大湯環状列石編」

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最後は秋田に暮らす外国人から見た、大館市と鹿角市で縄文のルーツを紐解く物語。小学校のALTの教師として秋田市で勤務するカナダ出身の主人公。大の日本文化好きで、縄文時代にも興味津々です。旅の最初に訪れたのは大館市にある築250年の文化施設「鳥潟会館」。およそ400年の歴史を持つ旧家・鳥潟家の住宅として建築され、8,000㎡を超える広大な敷地には、京風の意匠を取り入れた日本家屋や庭園が広がります。

[鳥潟会館]
大館市花岡町字根井下156
JR大館駅前 より 秋北バス「北陽中学校線〔繋沢経由〕」鳥潟会館前下車(約20~30分) 
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庭園の片隅にある、茶室の茅葺屋根に縄文文化との繋がりを感じると話します。

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施設スタッフの解説に熱心に耳を傾けます。

大館市を後に、次にやってきたのは鹿角市にある大湯環状列石。ここは「環状列石(通称:ストーンサークル)」と呼ばれる、縄文時代に人工的に石を2重の円形に並べた遺跡が出土したことで知られ、北秋田市の伊勢堂岱遺跡とともに、2021年に世界文化遺産に登録されました。縄文人が何のためにストーンサークルを作ったのか、さまざまな説がありますが、一般的には隣接する建物の柱の痕跡や、周囲から出土した祭祀(さいし)の遺物から、葬送儀礼や自然に対する畏敬の念を表す儀式を行う「祭祀施設」だったのではないかと考えられています。
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上空から見たストーンサークル。

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遺跡の中に作られた高台に登れば地上からもストーンサークルの全容を眺めることができます。

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初めて間近で見る縄文土器の造形の複雑さに思わず心を奪われます。

施設ガイドと共に遺跡をめぐった後は、遺跡と同じ敷地内にある「大湯ストーンサークル館」へ。ここでは、土器などの出土品を資料と共に見ることができます。さらにストーンサークル館では縄文文化を体験できるワークショップに参加することができます。施設スタッフ手作りの貫頭衣(縄文時代の衣服)を着て、縄文人なりきり体験や、遺跡から出土した首飾りを模したペンダントづくりの体験など、メニューはさまざまです。今回体験するのは土器づくり体験。施設スタッフから作り方を教わりながら、丁寧に年度をこねて、土器を形作ります。一番の見どころは「縄文」という言葉の由来ともなった、土器の模様付け。出土した土器に共通で見られる縄目の文様があったことから「縄文時代」と名付けられたように、縄などの道具を使って丁寧に文様を刻んでいきます。
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貝殻は、縄文人が時の模様をつける際に使っていたと言われる道具のひとつ。

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土器作りに向かう表情は真剣そのもの。

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さまざまな道具を使って模様を付けた手作り縄文土器。力作です。

茅葺屋根に縄文文化との繋がりを見出したように、この土器づくりを通じて彼は一体何を見出したのでしょうか。現在制作中のロングバージョンの映像では、この旅を通じて感じた縄文文化と現代のつながりについてのロングインタビューを収録予定です。日本とは全く異なる文化を持つ外国人から見た「縄文時代」。時代も文化も飛び越えて、縄文人は現代にどんなメッセージを投げかけているのか。また、彼はどんなメッセージを受け取ったのか。ぜひご覧ください!
 
[特別史跡 大湯環状列石・大湯ストーンサークル館]
鹿角市十和田大湯万座
東北自動車道十和田ICより車で約15分
秋田の世界遺産にまつわる3つのストーリー。今回お届けしたのはほんの一部ですが、それぞれの遺産にはここでは語り尽くせない魅力がまだまだあるんです。世界自然遺産と世界文化遺産の両方が隣接している都道府県はそう多くありません。ぜひ実際の自然や遺跡を体験しに、秋田を訪れてみてくださいね。

(公開:2022年12月/更新:2023年6月)